種の多様性は様々な要因て実現されていること、藻類にあっては「細胞内共生」がその大きな原動力となっていることが知られている。この細胞内共生現象は過去のものではなく、今も実際に起こっている。我々はこの細胞内共生過程を、結果の観察ではなく、実時間でその過程を解析できる系の確立のためにこの研究を始めた。 今年度は以下の実験を行なった。(1)顕微鏡を購入し連続観察が可能な条件を捜した。CCDカメラの購入はできなかったので、一時的に借用し、連続測定の準備を行なった。(2)研究の対象である渦鞭毛藻の培養を同時に進行させたが、必ずしも効率の良い培養条件が見つからなかった。その最大の理由は用いる海水にあり、瀬戸内海の海水は我々の使う種の培養には適していないことが判明した。(3)緑藻を用いてレクチンに対する感受性を予備的に調べた。その結果、渦鞭毛藻でみられる凝集反応は緑藻では顕著な効果としては認められなかった。(4)光合成生物の進化過程の考察を行なった。反応中心複合体、アンテナ複合体の一次構造に基づく系統性と、結合する色素の分光特性の相関を調べた。その結果、渦鞭毛藻に特徴的なペリディニン-クロロフィルa-蛋白質(PCP)は、一次構造、分光特性のいずれの意味においても他の生物群との関連が薄く、その起源が極めて特異なものと考えられることが明らかになった。この理由として、細胞内共生に与かる種(宿主、共生藻の両方の意味で)が特異的なのか、もしくは単に藻類の系統性だけでは論じられない起源との関連があるのか、という興味深い点が明らかになってきた。
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