本萌芽的研究の目的は (1)透過電子顕微鏡で十分強度の強いnmサイズの電子線プローブを生成し、それを自由に操作する技法の開発(平成9年度)。 (2)清浄な単結晶膜に1-5nmサイズの孤立半導体量子ドットを多数作製するMBE技術の開発(平成9年度)。 (3)上記のナノプローブ電子線を量子ドットに入射させ、チャージングやイオン化の現象を巧妙に制御し、孤立した量子ドットがナノプローブ電子線に引き寄せられついてくる条件を見いだす(ナノプローブ電子線“ピンセット"技術の確立) (4)クラスターの移動過程を高分解能TEMのTV像(1/60秒の時間分解能)でとらえ、その移動過程の解析する 平成9年度はこのうち(1)と(2)を行った。 まず既存の200kVの加速電圧の超高分解能電子顕微鏡のレンズ条件を変更し、数ナノメーター以下の電子線プローブを得るようにした。ついで、このプローブ径を実験的に確認するために、MgO単結晶薄膜中に埋め込まれた金、鉄、銅クラスターのナノ電子回析を行い、その構造を研究した。この場合は金属クラスターはMgO中に埋め込まれているため電子線によって動くことはない。つぎにMgO上に成長した金クラスターについては、10-50nm以上の強い電子線プローブをクラスターにあてると、内部構造が変化するとともに、少しずつ移動することが観察された。この結果からナノ電子ピンセットの可能性が確かにあることが示された。 また半導体上の金属クラスターの挙動を研究するため、シリコン( )表面上にタングステン、モリブデンなどの金属を吸着させてSTM観察した。金属は大部分がステップに吸着するが、テラス領域にも2nm程度のサイズの揃ったクラスターが観察された。このテラス上のクラスターは蒸着量を減少させると、ついには原子一個一個のオーダーで吸着することも確認できた。従って金属クラスターのサイズの変化させた試料でピンセットの動作の研究ができることがわかった。
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