本研究では、(1)透過型電子顕微鏡で十分強度の強い電子線プローブを生成し、それを自由に操作する技法の開発、(2)清浄な単結晶膜状に孤立半導体および金属量子ドットを作製する技術の開発、(3)上記のナノプローブ電子線が量子ドットと電気的な相互作用をして 引きつけられる条件の検討、(4)クラスターの移動過程を高分解能TEMのTV像で捉え、その移動過程を解析する。ことを研究目標にした。 平成9年度には(1)については、2-3nmのサイズの電子線プローブを生成し、試料上を自由に走査する技術の確立を行ったが、平成10年度は、MgO(001)基板上に、21世紀の半導体技術のキイテクノロジーになる銅の細線やドットを作製する技術開発を行った。そしてこの銅の量子ドットの電子線プローブをフォーカスしたところ、在留ガスと電子線の相互作用によって酸化物、窒化物が生成されることを解明した。またこの銅微粒子に電子線をあてたとき、どのくらいの照射電流のときクーロン力で量子ドットが動くかを実験した。またこのビデオ像の解析から動くスピードなどを実測した。 またもう一つのピンセットの基礎実験として、清浄シリコン半導体(111)表面に遷移金属クラスターを真空蒸着によってつけ、それを走査トンネル顕微鏡で観察するときに、クラスターや量子ドットにどのようにピンセット作用が及ぶかを、そのSTM像と電子状態をモニターするためのSTSで研究した。その結果、STM観察でクラスターが動くのは、殆どの場合、探針がクラスターに直接接触して力学的な相互作用を及ぼすときに限ることがわかり、電子顕微鏡によるナノ電子プローブのように、静電力ではクラスターを動かす力は得られないことも判明した。
|