研究概要 |
従来のコンピューティングシステムは,情報の媒体として電圧や電流等のレベル信号を用いてきた.ところが,古くはジョセフソン伝送線路等において,ソリトンを情報の媒体とする論理回路などの情報処理回路が提案され,シミュレーションによりその動作原理が研究されてきた.ここでは,レベル信号を用いる演算回路とは全く違って,ソリトンの特性を利用した独特の回路形式が必要である.すでに、研究代表者らは,そのような演算回路の一方法として,ソリトンをトラップする回路を提案し,論理回路やニューラルネットワークの回路として応用可能であることを示している.本研究は,同様の基本原理に基づく演算回路をジョセフソン伝送線路ではなく,光コンピューティングの基本回路として,その構成方法を提案し,シミュレーションによって原理を確認する点に特徴がある.基本的には,マクロな量子状態を作りだし,それをトラップする点に焦点があり,このような新しい原理に基づく回路方式を大きく2つの方法(光ファイバ上のソリトン伝送を利用する方法及びループ状の光ファイバ系で干渉系を実現し系の状態を量子化する方法)で検討し,主として実現可能性を探索することを目的としている. 平成9年度は,2つの方法(光ファイバ上のソリトン伝送を利用する方法及びループ状の光ファイバ系で干渉系を実現し系の状態を量子化する方法)について,原理的な考察を加えた上で,基本的な動作について,実際のデバイスを想定したコンピュータシミュレーションを行った.具体的には,1)2つの方法について,理論的に考察を行い,システム全体を設計し,実際のデバイスを想定した条件を設定した.2)シミュレーションのためにワークステーションを導入し,効率的な探索のための環境を整備した.3)2つの方法に対して,具体的なプログラムを開発した.4)基本的な原理を確認するためのシミュレーションを行った.5)干渉系の部分については,基礎実験を行って,シミュレーションに用いる条件の割り出しを行った.
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