研究概要 |
従来の有限要素法は対象領域の完全なメッシュ構造が得られていることを前提としているが,メッシュ生成は未解決の問題を含む難しい作業である.このことを反省して,メッシュが不完全でもそれなりに動作する有限要素法を構成することが本研究の目的である.これを実現するための一ステップとして,本年度はラプラス方程式を有限要素法で解くときメッシュの乱れが解に与える影響を調べた.その結果,従来のままの有限要素法では乱れが解に大きな影響を与えるが,有限要素法を少し改良することによって乱れたメッシュの上でもそれなりの解を得ることができることを確認できた.メッシュの生成を,位相優先法とよばれるロバストな計算法で実行すると,数値的には乱れを含むかもしれないが,位相的には一貫性の保たれたメッシュが得られる.このメッシュでは,乱れは,要素のいくつかが裏返しになって重なる状態として現われる.そこで裏返しの要素に対しては,離散化の際の代数方程式の係数を反転することによって,乱れたメッシュからも意味のある方程式を作ることができる.この方法で作った有限要素方程式は,メッシュの乱れが解にそれほど大きな影響を与えない.特に解が一次関数で表される場合には,メッシュに乱れがあっても厳密に正しい解が得られることがわかった.これらの成果により,乱れを含んだメッシュの上でも動作する有限要素法が一般的に構成できる見通しができた.
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