研究概要 |
微小構造材料では、原子レベルで微視構造を制御できうる可能性を有する反面、局所における原子配置の不整合から破壊が発生・伝播して構造体全体の機能を奪うことがある.本研究の目的は,微小構造体の信頼性を確保するために,原子レベルからの破壊クライテリオンを明らかにすることである.分子動力学による破壊シミュレーション結果の詳細な観察によって局所破壊条件を抽出することと結晶格子のエネルギー的不安定性を結びつける解析を行った.得られた結果は以下のようにまとめられる. (1)分子動力学法によってニッケル単結晶(埋め込み原子法による原子間ポテンシャル使用)の引張シミュレーションを行った.セルの拘束条件,温度等のパラメータを変化させて,破壊形態(へき開型とせん断型)の変化様相,および,破壊開始点近傍の原子配置を観察した. (2)破壊が始まる局所における結晶の格子形状(すなわち,局所ひずみ)には破壊形式によって特徴があることを見いだした. (3)自由エネルギーより応力,弾性係数,剛性係数を算出した.この正値性より変形に対してエネルギー的に不安定となる格子形状を解析した. (4)分子動力学より得られた多自由度系の局所不安定破壊クライテリオンについて格子不安定性の適用可能性を明らかにした.局所の特徴的な格子形状は局所のエネルギー不安定によって説明できることがわかった. 本年度の概念は,転位の発生や移動等の動的過程についても適用可能と考えられる.現在,これらへの拡張について検討中である.
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