研究概要 |
逆問題の背後には整然とした数理構造が有り,この構造を考慮することにより,逆問題の解析で障害となる不適切性に対し最良の対処ができる.本研究の目的は,固体の境界値逆問題の数理構造解明による適切化された逆解析解法を確立することにある.このためまず,逆問題の数理構造解析を固体の境界値逆問題に適用し,誤差の拡大率を表す条件数を評価する.特異値分解とランク低減を組み合わせた適切化逆解析手法を適用する.同定結果を赤外線サーモグラフィの計測結果と比較することにより,手法の有効性を実証する. 平成9年度に得られた主な研究成果は,以下の通りである. 1.逆問題の数理構造の理論解析の手順を,弾性体の境界値逆問題に適用することにより,この問題の数理構造を理論的に明らかにした.過剰規定境界値をモード分離し,不完全規定境界における未知境界値の推定結果に対し,過剰規定境界値の各モードがどのような影響を及ぼすかを,定量的に明らかにした. 2.前項の問題を,境界要素法で離散化し,過剰規定境界値をもとに未知境界値を推定するマトリックス方程式を導き,これを数値的に解く数値シミュレーションを実施した.適切化された逆解析手法として,特異値分解にランク低減を組み合わせた方法を適用した.ランク低減で用いる最適なランクの選定について,いくつかの試みを行った. 3.赤外線を透過するサファイア平板とセラミック・ピンを接触させ,平板側から赤外線応力測定装置により接触部を観測することにより,接触部における主応力和を非侵入で計測する実験を行い,その結果を理論解析結果と比較することにより,計測手法の妥当性を確認した.
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