研究概要 |
本年度は,結合部の伝熱機構と微小接触状態を同時に測定し,より正確に接触熱抵抗を評価できるシステムを試作し,それを用いて結合部の熱特性を評価した. 接触熱抵抗を求めるためには,結合面での温度および熱流束を知らねばならないが,これらを実際に測定することはできない.そこで,結合面近傍の温度測定値から結合面での温度および熱流束を推定する方法を検討した.熱源が物体内に存在し,表面から熱が流出するときの物体内の温度勾配を指数関数で近似することにより,これらを推定することができる.その推定式の妥当性を確かめるために,有限要素法を用いた数値解析結果を用いて比較を行った結果,上流および下流からの推定熱流束が一致し,推定温度も解析値と一致することが確認できた. 局所的な接触率は,超音波が接触している部分では透過し非接触部では反射する性質を利用して測定することができる.反射波高値に基づいて局所的な接触状態がわかるので,結合面を分割しセンサを走査させることにより,接触率および接触圧力の分布を測定することができる.実際の結合面においては,接触率は場所によって0〜5%程度のばらつきがあり,一様でないことが確認できた. 一方,本システムでは,結合部に介在する空気の伝熱的影響を抑制するため,結合部近傍の真空度を制御できるようにした.真空引きを行った場合(4Pa)に比べ,常圧(105Pa)では上流側と下流側での推定熱流束の差が大きかった.これは結合部に介在する空気による熱損失の影響と考えられる.この結果より,測定においては雰囲気気体の影響を考慮する必要があると言える. 本システムを用いて真実接触面積と接触熱抵抗の関係を求めた.研削仕上げした面粕さRa0.2の結合部においては,真実接触面積の増加にともない接触熱抵抗が反比例して低下することが確認された.これは,理論解析の結果と定性的に一致している.
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