研究概要 |
走査プローブ顕微鏡法(Scanning Probe Microscopy;SPM)を回転体の測定に適用した新しいコンセプトの真円度測定法の開発研究を行った。研究室に現有しているタリロンド真円度測定機を改良しただけではその分解能に限界があることが検証されたので、空気軸受けを用いた測定システムを新たに設計、製作した。また、トンネル電流を検出する走査トンネル顕微鏡(Scanning Tuneling Microscopy;STM)モードではチップのクラッシュが多発し、その不安定性が露呈したため、原子間力顕微鏡法(Atomic Force Microscopy;AFM)に変更してナノメータオーダーの真円度測定を目指した。剛性や吸振動性を考慮して、位置決め精度としてサブミクロンの精度を有する万能測長機上に各ユニットを組み上げた。基本構成要素は、(1)回転テーブル(空気軸受け,プーリー,ステッピングモーター)、(2)原子間力を計測するためのチップとトライポット、(3)レーザーフォトダイオードと四分割フォトディテクター、(4)ピエゾ素子駆動による測定物センタリング装置である。AFMを含めてすべての測定ユニットはパーソナルコンピュータによって、駆動、制御されている。測定は市販のAFMを管理している実験室雰囲気とした。SKH51のピンゲージ(0.1φ)をめのうのホルダーに装着しピエゾ素子を逐次駆動させてセンタリングを行った。数rpmまでの回転数でテーブルを操作したところ、回転に起因するリード線からの微弱な電磁ノイズが発生が認められたが、これは回転数を下げることとコードレス化を考えることで解消するものと思われる。また、ディテクターの検出感度に多少の問題が残されているものの現在のところ50nmにせまる検出感度が得られている。本装置はプロトタイプの域を出ないが、操作性を向上させれば真円度、円筒度をナノメータオーダで測定する可能性を十分に示唆することができたものと考えられる。
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