筆者らは、本研究に先立つ実験により、厚さ10ミクロンメータ、直径10ミクロンメータから30ミクロンメータの微小オリフィスを通る水の流れの圧力損失が流体の基礎方程式の予測値より異常に高い値をとるという現象を見い出している。 本研究では、水を用いた前述の実験と同種の実験を空気を用いて行った。その結果、直径30ミクロンメータのオリフィスでは水と同様の異常性が見られるが、直径10ミクロンメータのオリフィスでは異常性がむしろ減少することを見い出している。これは空気の圧縮性や湿度により大きく影響されることはない。本実験結果は、空気も水と同様に基礎方程式の予測通りには流れないことを示している。 一方、1ミリメータから0.2ミリメータの小オリフィスを用いて流出ジェットの反力とジェット直径を精密に測定する実験を行った。その結果、反力は基礎方程式の数値解析による値より小さい値を示し、ジェット直径は数値解析の値より大きな値を示した。この結果を運動量の法則をもとに解析し、水がひずみを伴う流動に際し弾性力を生じると考えると説明がつくことを示している。すなわち、ジェット直径の膨らみから運動量による解析をもとに弾性力を算定し、一方でジェット反力の値から同じく運動量による解析をもとに弾性力を算定し、両方法による弾性力を比較したところ両者はほぼ同程度となった。このことは、水も粘弾性流体の一つと考える方が妥当であり、従来の基礎方程式の修正が必要になることを示している。
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