研究概要 |
磁性流体は黒色・不透明液体なので,レーザ・ドプラー流速計,PIV等の光学的手法を用いた流速測定法を適用できない。また,熱線・熱膜流速計などの電気的測定法では,熱線プローブへの磁場の影響が無視できない。一方,パルス超音波ドップラー効果を利用した超音波流速分布測定法(UVP法)は,非接触測定,校正不要などのレーザ計測と同様の利点があるばかりでなく,水銀やナトリウムなどの液体金属などの光吸収性の高い不透明液体への適用が可能である。そこで,本研究では,UVP法の磁性流動計測への適用の可能性を探り,様々な流れ場での速度分布計測を行った。 まず超音波エコーの散乱粒子の検討を行った。その結果酸化シリコンの多孔質微粒子がある程度良好なエコー信号を反射する事が明らかになった。しかし,磁場印加によってみかけ上磁性流体の密度変化が生じるので,散乱微粒子が浮上する現象が生じた。強磁場下での散乱粒子の取り扱いは,今後の課題である。 流れ場の一例として,円管内振動流・スロッシング流・回転磁場によって誘起される旋回流の速度分布計測を行った。その結果,従来理論解析によって明らかになっていた印加磁場の流動場に及ぼす影響が確かめられた。特にスロッシング流においては,内部流速のパワースペクトルなども非線形理論解析結果と良好に一致し,本測定法の有効性が充分確認できた。しかし,超音波プローブの設置角度,データ処理手順,音速に及ぼす磁場の影響等について,いくつかの問題点も明らかになった。
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