一般に生物にはホメオスタシス(恒常性)により、その体内の状態を一定に維持しようとする働きがあるが、ガイア仮説のように地球を一つの生命体と見なすことができれば、個々の生物体が外部の環境に対しても、その状態を維持する働きがあると考えられる。また、この生物の外部環境に対するホメオスタシスをうまく利用することにより、環境調和型システムに応用することが可能であり、エネルギーの節約にもなる。特に閉鎖環境において植物の存在が蒸散によりその系の温度を低下させ、その温度変化を緩和することが推測できるが、過去の研究においてこれをはっきりと示した研究は皆無であった。そこで本研究では、まず第一段階として植物が存在する系と存在しない系において、外部からの熱入力の変化に対して、それぞれの系の温度がどのように変化し緩和されるのか、温度変化と湿度変化を測定し比較することにより、閉鎖環境における植物の効果を調べた結果、次のような知見が得られた。 (1)26℃以上の高温時では植物の存在により温度が低下し、その温度低下は高温になるほど著しい。 (2)外部の温度変化に対する系の温度変化の振動振幅が、植物の存在により緩和されて小さくなる。 これらは植物の蒸散の効果によるものであると考えられるが、本実験は植物を含む複雑な系における測定であるため、測定結果について十分に説明できない点も多い。これらを解決するためには、現象を支配している物理パラメータを把握し、生物特有の生理現象とはっきりと区別して考察する必要があるという結論に至った。
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