生物の外部温熱環境に対するホメオスタシスをうまく利用することにより、環境調和型熱機械システム(バイオエアコン)に応用することが可能であり、結果的にエネルギーの節約にもつながると考えられる。特に閉鎖環境において植物の存在が蒸散によりその系の温度を低下させ、その温度変化を緩和することが推測できるが、過去の研究においてこれをはっきりと示した研究は皆無であった。そこで本研究では、植物が存在する系と存在しない系において、外部からの熱入力の変化に対して、それぞれの系の温度がどのように変化し緩和されるのか、温度変化と湿度変化を測定し比較することにより、閉鎖環境における植物の効果を調べた。そして、さらにこれらの系をモデル化し、植物による吸熱量を独立した水の蒸発潜熱の測定から定量的に推算した結果、次のような知見が得られた。 (1) 26℃以上の高温時では植物の存在により温度が低下し、その温度低下は高温になるほど著しい。 (2) 外部の温度変化に対する系の温度変化が、植物の存在により緩和されて小さくなる。 (3) 対象とした系における植物の吸熱量は1〜2W程度であり、外気温により変化する。 これらの研究結果から、植物の蒸散効果を利用することにより、温度調整機能を持ったバイオエアコンの開発の可能性が示された。しかし、冷房能力は機械式のものと比べかなり劣るため、効率の良い植物種の選択等さらなる研究が必要である。
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