研究概要 |
本研究では,燃焼合成の燃焼波に関わる現象の中でも燃焼波の形成(着火)に注目し,燃焼波形成のために外部から供給しなければならないエネルギを測定するとともに,この着火のためのエネルギが粒子の大きさ(初期粒径),複数元素の混合割合(混合比),最終生成物による希釈の度合い(希釈度),燃焼波到達直前の温度(初期温度),照射される面積などにいかなる依存性を示すかを実験的に明らかにすることを研究目的としている。実験においては,試料であるチタニウム炭素混合粉末圧粉体の端面を,赤外線で加熱するということで外部からエネルギを供給し,燃焼波の形成を促すともに,加熱開始から燃焼波形成までの着火遅れ時間を測定するという実験方法を採用している。本年度においては,燃焼波の形成が可能な初期粒径,混合比,希釈度,照射面積の範囲を明確にするという実験を行ってきたし,これと平行して,赤外線放射加熱装置の加熱能力増強のための方策を施してきたし,赤外線放射加熱装置の熱流束を正確に測定する方法の確立をも行ってきた。これにより,赤外線放射加熱装置1器の最大熱流束が3.0MJ/m^2であること.圧粉体試料を構成する粉末粒子の粒径は反応に関与する粒子表面積を介して着火遅れ時間に大きな影響を及ぼすこと,混合比や希釈度の影響としては試料単位体積あたりの発熱量に依存していること,照射面積の減少は供給エネルギの総量の低下を引き起こし着火遅れ時間の増大をもたらすことが判明した。また,供給する熱流束を低下させると着火遅れ時間が長くなり,燃焼波形成までに供給すべきエネルギが増大するという結果も得られているが,これについては燃焼波形成までに生じる熱損失と関連があると推察されるので,継続的に調べていくことを考えている。
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