研究概要 |
A.水滴が存在する環境下での絶縁破壊現象について実験を行い、以下の結果を得た。 1)帯電水滴落下時の針対針ギャップの破壊特性を評価し以下の結果を得た。 ・ 破壊電圧は水滴落下の無い場合に比べ約8割減少する。 ・ 高電界を印加すると水滴は傘状に広がる。 2)無電荷水滴落下時の針対針ギャップの破壊特性を評価し以下の結果を得た。 ・ 無電荷水滴を落下させた場合,破壊電圧は約5割低下する。 ・ 落下水滴量が大幅に(1/8以上)減少しても,破壊電圧は約3割低下する。 ・ 電極に広範囲で落下する水滴だけが破壊電圧低下の原因ではなく,電極先端から落下するほんのわずかな雫状の水滴にのみよっても破壊電圧は約4割低下する。 3)印加極性の違いによる針対針ギャップの破壊特性を評価し以下の結果を得た。 ・ 正および負の直流高電圧を印加したどちらの場合も,水滴落下により破壊電圧は約4割程度減少した。 ・ 上部電極から雫状の水滴を落下させた場合,水滴落下により破壊電圧はいずれの極性の場合も約4割程度減少した。ただし,正を印加した場合はギャップ長の変化によって破壊電圧比のばらつきには極性による若干の差が見られた。 ・ 破壊特性の落下水量に対する依存性は,f≧9ml/sで若干の上昇傾向が見られるがその上昇は小さい。また,極性に対する依存性はほとんど見られない。 B.A.の実験の結果、降雨により絶縁破壊が促進される顕著な現象は観察されなかった。そこで、降雨により荷電雲直下の電界がどのような影響を受けるかについて数値解析による検討を行った。即ち,雷雲の直下の電界は降雨前に最大となり、その後降雨に伴って減少することから降雨直前に雷放電を生ずるとする仮説について解析を行った。解析は一次元モデルを用い,一定密度で分布する雲水滴が電荷を保持したまま集まって大きな水滴となり落下するとの仮定で行なった。その結果、水滴の落下により電界が減少していく過程が示された。
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