風力エネルギーは地球環境に対して汚染を与えないため米国、欧州諸国で実用化が推進されており、近時再生可能なエネルギーとして利用が推進されている。我が国においても、電力会社、自治体を中心として導入計画を立てているところが多くなってきた。特に風況条件の良い自治体においては、発電によって得られた余剰電力を、電力会社に売電することによって投資を回収できる見込みが高まったため、風力発電に対する期待が大きい。 一方風力発電を推進する際、最も重要な問題は風力エネルギーの賦存量の推定方法である。欧州諸国ではEUが中心になり、すでにWind Atlas(風況マップ)が作成されている。わが国においては、NEDOが中心になり大型風力発電技術開発委員会が設置され、日本全国の風況マップが作成されているが、これらの風況マップはグローバルな視点から風力エネルギーの賦存量を求めたものであり、実際に風車の最適位置を決定するには、風車設置予定地点の風況の他に、3次元地形起伏、障害物、地表粗度、さらに厳密には風車相互の干渉を考慮した方法でなければ取得発電量を正確には予測できない。 本研究では、欧州で開発されたWASPというソフトを、日本の代表的な風力発電所である竜飛ウインドパークに適用し、賦存量の予測結果と実測値とを比較した。また、予測結果と実測値との差の生ずる要因について考察し、ウインドパークの各地点における妥当な賦存量を求める方法を提案した。 一方、風力エネルギーの賦存量を考える場合、上述のような年間平均的な賦存量の他に、時系列的な風力エネルギーの変動を予測することも必要である。たとえば、ディーゼル発電機と風力発電機のハイブリットシステムを考える場合、数十分先、数時間先の風速の変動が予測できれば、ディーゼル発電機の出力を絞り、風力発電機で代替し全体として省燃料制御が実現できよう。本研究では、ニューラルネットワークを用いて数十分先、数時間先の風速を予測する研究を試みた。 以上のように、本研究では、年間平均的な賦存量と時系列的な風力エネルギーの予測方法を研究し、風力エネルギーの実用化のための問題点を解決する糸口をつかむこどができた。
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