研究課題/領域番号 |
09875077
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小長井 誠 東京工業大学, 工学部, 教授 (40111653)
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研究分担者 |
岡本 保 東京工業大学, 量子効果エレクトロニクス研究センター, 助手 (80233378)
山田 明 東京工業大学, 工学部, 助教授 (40220363)
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キーワード | 窒化インジウム / III-V族化合物半導体 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究では、超高濃度ドープInNの電気的特性を詳細に検討した。まず、(0001)Al_2O_3基板上にMOCVD法により成長した電子濃度1×10^<20>cm^<-3>のInN薄膜の評価を行った。X線回折および電子線回折の結果より、この膜はエピタキシャル成長していることを確認している。低温における電気的特性を評価したところ、3K近傍以下から電気抵抗が急激に減少した。このような、電気特性の温度依存性は、半導体における超伝導転移を思わせる結果である。また、この現象は磁界印加により壊れることが観測された。さらに、1×10^<20>cm^<-3>から2×10^<21>cm^<-3>までの様々な電子濃度を有するInN薄膜についても同様の評価を行ったところ、電子濃度が低いほど電気抵抗が急激に減少し、2×10^<21>cm^<-3>の膜では抵抗の減少は観測されなかった。 この現象のメカニズムとして、Inの凝集があげられるが、X線回折ではInのピークは観測されておらず、表面観察ではInドロップレットの存在は認められなかった。さらに、このInN膜は窒素空孔がキャリアの生成に寄与しているが、電子濃度依存性の結果では、相対的にIn濃度が少ない低電子濃度の膜で電気抵抗の減少が見られている。以上の結果より、この特異な電気的特性はInの凝集によるものではないと考えられる。 さらに、InN膜についてコヒーレンス長の計算を行った。コヒーレンス長は超伝導弱結合素子に応用する際に、重要なパラメータとなる。その結果、InNの低温におけるコヒーレンス長が1μm程度と極めて大きく、この材料が超伝導結合素子に有効であることが明らかになった。
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