研究概要 |
最近の超微細加工技術の進歩にともない,ナノメーターオーダーの電子デバイスの作製が可能となってきた.単電子トンネルデバイスをはじめとし,種々の量子デバイスが提案,試作されている.しかしながら,トンネルデバイスを例にとると,電子トンネル特性は加工精度に非常に敏感である.一方,原子の自己組織化によって形成される不規則ポテンシャル系は作製が容易で,また,フラクタルの観点からはパターンが非常に安定している.本研究では今年度,メゾスコピックランダムポテンシャル系における電子の空間フラクタル性と二次相転移について解析し,以下の結果を得た. 1.有限差分法を基礎とした,電子波動関数の定常計算法と動力学計算法を開発した.多電子系の計算が精度よく行えるようになった. 2.メゾスコピックランダムポテンシャル系に形成される電子クラスター解析を行い,次のことがわかった.(i)ポテンシャル濃度が低い領域では,相関距離が濃度の増加とともに短くなる.(ii)中間的な濃度領域では相関距離が一定となる.(iii)高濃度領域では,相関距離が濃度の増加とともに長くなる. 3.中間的な濃度領域では,電子相関距離から求められるフラクタル次元が1以下となり,電子クラスターは局在する.また,局在・非局在の境界における電子クラスター形状はフラクタルとなる. 4.蒸着装置を制作し,蒸着予備実験を行った.Si基板上にPbを蒸着させ,ある温度になるとPbクラスター分布がフラクタルになることを観察した.
|