研究概要 |
平成10年度には,(1)トンネル現象におけるスケーリング則の解明と(2)不規則ポテンシャル系における電子の局在について解析した.まず,(1)については,電場とトンネル電場との差を制御変数と見なすと,トンネル電子確率密度の増加に対する0次,1次,2次モーメントに対してべき乗則が成り立つことがわかった.さらに,電子の確率密度がスケールされることがわかった.(2)については,不純物原子によって半導体表面上に形成される不規則ポテンシャルの密度・高さと電子確率密度分布との関係を解析した.不規則ポテンシャルは古典バーコレーション密度においてパーコレション転移を起こすが,不規則ポテンシャルの高さが低い場合には,電子相関距離が最小となるポテンシャル密度は古典パーコレーション点に一致した.しかし,ポテンシャルが高い場合には,電子相関距離の最小点に対応するポテンシャル密度は古典パーコレーション密度より高くなった.最後に,不規則ポテンシャル系における量子パーコレーション現象を利用した,スイッチングデバイスを提案した.不規則ポテンシャルを利用するので,微細加工技術を必要としない点がこのデバイスの有利な点である.不規則ポテンシャル密度を古典パーコレーションレーション密度に一致させることで,信頼性のあるスイッチング性能が得られることがわかった.
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