角錐ホーンアンテナの内壁を電波吸収体シートで被覆した構造について、アンテナの放射特性を理論と実験により調べることを行った。ホーンアンテナにはXバンドの標準ホーンアンテナ、電波吸収体シートにはXバンドのゴムフェライト電波吸収体を用いて、放射特性を電波暗室内で測定した。測定結果をホーンアンテナの開口電磁界分布を導波管の基本モードをもとに計算した近似式による結果と比較して次のことが判明した。 (1)主偏波の放射界は指向特性、利得とも実験値と理論値がよく一致する。 (2)ホーンアンテナの電界に垂直な壁面に電波吸収体シートを装化すると、無装荷の場合に比べて放射特性に大きな変化が見られたが、平行な壁面に装荷した場合は放射特性の変化はごくわずかであった。この結果は、従来の研究結果とくい違うものである。従来の研究では、電波吸収体を電界に垂直な壁面ではなく平行な壁面に装荷すると、交差偏波の発生を抑制できることが報告されているが、実験では交差偏波の抑制効果は両者とも同程度であった。 (3)ホーンアンテナの電界に垂直な壁面に電波吸収体シートを装荷する場合、電波吸収体の装荷場所によって利得の低下や交差偏波の発生が大きく変化することが判明した。 以上のような結果を踏まえて、より精密な理論解析を平成10年度は行う。
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