臨海部の沖積層を形成する主な作用は、海水面の変動と供給土砂の量と質の変化(気候変動や植生も関係)、河川流路の移動などがある。特に、最近の1.8〜2.0万年前からの100m以上に及ぶ海水面変動は、沖積地盤の生成に大きな影響を及ぼしている。さらに、河川から運ばれる供給土砂量の多少も、堆積場の環境を左右する。海水面上昇速度を上回る土砂供給量がある場合には、淡水成の環境が続き、比較的粗粒の材料が堆積する。逆の場合には、淡水成から汽水混合、さらには海成の環境に移行し、より細粒な材料が堆積することになる。一般には、海進時には上方細粒化、海退時には上方粗粒化が生じると言われている。また、河川流路の移動によっても寄州堆積物内には、上方粗粒化の生じることが示されている。 堆積学的には、このように生成された地層内の微細堆積構造、分布形態などの露頭調査の詳細な情報に基づいて、堆積機構や堆積環境を推定することになるが、工学的な土質柱状図では、こうした情報は不明確な場合が多い。そこで、一度の大きな海進・海退を考慮した層序モデル・モデル柱状図の提案を行った。この提案モデルでは、海進・海退の速度の差異を考慮した基本的な4つのモデル(基本モデル)に加え、上部・下部砂層内に粘性土や中間土を挟み込んだ12種類の追加モデルで構成されている。 これらのモデル柱状図と稲沢市南西部と北東部で得られた21本の土質柱状図とを、マルコフ連鎖と赤池情報量基準の考え方を援用して、類似性評価を行った。その結果、南西部の地盤は急海進・緩海退モデルで評価できること、緩海退・急海進モデルではまったく評価できないこと、北東部の地盤は、ここに提案するモデルでは評価できないことなどが明らかになった。
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