本研究は塩水の進入と潮汐の影響により、流量の把握が困難な河口密度流場における新しい流量観測システムの構築に向けて、超音波ドップラー流速分布計(ADCP)による流速、水位、密度構造の同時計測の可能性について評価を行い、流量観測への適用性について検討を加えることを目的としている。 北海道石狩川の河口上流14.5Km地点において、1997年7月17日〜8月4日の期間、流心の河床にADCPを設置し計測を実施した。ADCPの計測結果より得られる密度境界面情報と実際の密度構造を比較するために、設置地点にメモリー式小型水温塩分計(補助金で購入)を設置し、密度の連続観測を実施するとともに、電磁流速計によるADCPの流速検定も行った。また、7月30日〜8月4日には船と橋を利用した流況と水質の集中観測を実施し、バックグランドデータの収集も行った。現地観測によって得られた流速および塩分データを基に密度境界面の抽出と流速の平均化処理を行い、上層および下層の平均流速、単位幅流量の算定を試みた。その結果、十分な精度で境界面位置の算定が可能であるとともに、これまで算定が困難であった上層淡水の潮汐に対応した変動と降雨出水状況、さらには下層塩水の流動状況までも捉えることができた。 本年度の研究により、河口二層流場においてADCPを用いることにより十分な精度で流量の時系列データが採取できることがわかった。
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