本年度は、地域分析を行うために用いられるモデルのうち、フィードバックがかからない代表的なモデルのパラメータ推定における重要な問題を整理している。それらの中で、本研究で取りあげることとした多重共線性と誤差項の分散不均一・空間的自己相関について既存の研究を整理した。特に多重共線性の対処法として用いられることの多い主成分回帰とリッジ回帰についてその相互関係を、他の工学分野における既存研究との観点から体系的に整理し、主成分回帰については打切り特異値分解、リッジ回帰についてはTikhonovの適切化と本質的に同じであることを示している。今後は、誤差項の分散不均一・空間的自己相関について同様の整理を行う予定であり、これらによって、各手法の限界がより明確に把握可能となる。 次に、各種社会経済データを用いた実証研究のために、東京都の都市計画地図情報システムを利用したシステム構築を行った。当システムについては、引き続き分析に必要なデータの追加と加工を進める予定であり、分析手法上の必要性に応じて、サブシステムの構築等に関する検討を行う。さらに、特にこの分野に特徴的な残差の空間的相関について、簡単な回帰モデルを例に既存の研究成果に関する実証比較を試み、政策分析を前提とした場合には、これらの問題を無視し得ないという示唆を得ている。来年度は、一部これらの作業を修正しながら、それぞれの統計学的問題に対する対処法における各種検定手法について、「仮説」を「験証」するうえでの問題点を「験証度」という観点から整理し、最終的に、これらの手順がモデルの反証可能性をどの程度担保し、あるいはどのような問題点を抱えているかについて検討を行う予定である。
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