研究概要 |
当初の予定どおり,対象地域を長野市と周辺地域に限定して調査分析を行うこととした。 空間種別としては,都市空間の主要部分である街路空間,建造物,公園・オープンスペース,静水と流水に分けた水辺空間の他,単体物として樹木,石・彫刻・モニュメントを考え,まず,一次調査として踏査を行い個々の候補空間の写真撮影を行った。 写真をもとに最終的な調査空間を決定し,それぞれの空間においてビデオ撮影を行う一方で音情報等も含める形で詳細な文章スケッチを行った。脳波測定は被験者全員について現場で実施する予定であったが,大部分の調査地点には人通りがあり人に見られると感情に大きな乱れが生ずるという被験者の述懐が得られたため,少数の被験者についてのみ乗用車に乗った状態で脳波を測定したり,人通りの切れ目を狙って測定するという厳しい条件下での測定を実行した。この被験者についてはビデオ画像(音声付き)を見た場合の脳波反応との比較を行い,現場を実験室内での脳波スペクトルの相違の程度を確認する予定である。他の被験者については,現場での脳波測定はあきらめ,ビデオ画像による測定のみ実施したが,時間的制約もあり対象空間の一部に止っている。また,ジャンル別音楽(ロック,クラッシック,ポップス,ジャズ,レゲェ,民謡,演歌,童謡等)をそれぞれ数曲ずつ用意し,各曲を伏せて被験者に聞かせながら脳波測定を行った。 被験者は未だ少数であるが,脳波発現のパターンについては次のような結果が得られた。(1)アルファ波のスペクトルパワーの値は被験者間で大きな差異がある。(2)街路空間については,人や車の通りが少なく静かであること,自然音があること,建物が木質系であることなどにより,α波の発現量が増える。(3)公園・オープンスペースについては,周辺に老朽化した建物がなく中〜大の樹木があること,自然音があること,開た路面は通常のものの他雑草や土で覆われていることなどがアルファ波を多く発生させる要因となる。(4)音楽のジャンルによるアルファ波発現には一定の傾向がみられない。
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