研究概要 |
本研究は地震による建物破壊に起因する人的被害の抜本的低減を目的としており、激震下における人的被害を「建物構造破壊」→「建物内部崩壊」→「生存空間被災」→「人的被害発生」という時系列展開に基づくメカニズムで理解するためのアプローチ法を提言するものである。そのために必要なツールとして、建物の力学的崩壊パターンを数量評価する尺度および崩壊家屋内の生存空間の保存状態を記述する尺度構成を論議する。 本研究は3カ年の研究期間を予定しており、遅滞なく進めるために以下のサブテーマを想定した。 (1)サブテーマ1:基礎資料の構築 1)被害写真の収集、2)被害写真のデータベース化 (2)サブテーマ2:建物内生存空間の崩壊パターン記述法の考察 1)建物の構造的崩壊パターン分類、2)建物内生存空間崩壊基準の整理 (3)サブテーマ3:構造被害-生存空間被害-死傷者の関係考察 (4)サブテーマ4:死傷者発生モデルの検討 平成9年度は初年度に当たり、実施内容および得られた成果は以下のとおりである。 サブテーマ(1)基礎資料の構築について:基礎データとして、兵庫県南部地震の様々な建物構造種別ごとの被害写真を、主として淡路島北淡町において都合3回の調査を行い、約5,000枚を収集した。 サブテーマ(2)建物内生存空間の崩壊パターン記述法の考察について:建物内生存空間の崩壊様式を記述する上で、建物の構造的被害パターンを分類する必要がある。本年度は主として木造建物の被害パターンを(1)の資料にもとづき分類した。結果、木造建物の構造的被害パターンをかなり一般性の高い分類として得、被害尺度の定義に照らし数量化することができた。次年度以降は、この分類にもとづき、さらに内部空間崩壊規準の整理へと発展させる予定である。
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