研究概要 |
都市の緑環境研究においては植生についての「量」、「種類」、「位置」、「形態」の概念が重要だが「形態」に関する定量的記述方法は確立されていない。本研究は、「塊状緑被率」の算定手法を提案し、実際の現代都市の幾つかに適用しその有効性を検証するものである。 本研究で扱う都市は1mを1画素とする離散化画像で表わされた都市であり、12500分の1のカラー航空写真を原資科としている。この離散化都市画像の色情報から樹木,草地を抽出し特定色が占める領域を定量的に記述する方法を構築している。 都市の緑を表現するために、(1)分布形態の複雑性から緑被形態の塊状性を表現する指標として「形態指数」(基準面積に対する形態の周長)、(2)完全拡散状態の形態指数および完全集中状態の形態指数に対する対象の形態指数の割合である「拡散指数」の算定式を誘導した。これにより緑量の塊状度を表わす塊状指数(1-「拡散指数」)および塊状緑被率(「塊状指数」×「緑被率」)を定義した。 仙台市、横浜市、京都市、ヘルシンキ市の塊状緑被率を実際に算出したところ、ヘルシンキ市では緑が豊富なばかりでなく塊ぐあいも大きい緑被が見られること、横浜市は塊状度が小さい緑被が分布の大半を占めることなどが明らかになった。 また、都市の緑の構造を評価する目的で、仙台市の第一種住居専用地域、第二種住居専用地域、住居地域、近隣商業地域および商業地域それぞれから合計100域を選定し塊状指数を算出した。この結果、第一種住居専用地域の住宅地における塊状指数は0.2〜0.3の間に集中していることなど、用途地域ごとに特色のある分布形状が得られた。 以上、緑被の形態を表わす「拡散指数」や「塊状指数」が都市の緑の準微視的な水準での定量化手法として十分可能性のあることを検証した。
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