地下通路にあるナヴィゲーションのために使用できる、音響と光と接触の情報がどのようなものであるのか、それらが視覚障害者にどのように利用されているのかを明らかにすることを目的にした。(1)視覚障害者が日常で利用している地下街通路での参加観察の方法、(2)そこで発見したことを他の通路で実験的に確認する方法、という二種のデータを収集した。地下空間の非視覚的なナヴィゲーションのエキスパートである3名の視覚障害者(弱視1名、全盲2名)に、東京駅、池袋駅、新宿駅周辺の地下、および地上空間をフィールドにして検討した。情報の候補として以下の5種が示された。 (1)弱視者は直線歩行を支えるために天井の蛍光管配列の路面への映り込みという光学的情報を利用している。(2)白杖を使用する全盲の者は、地下通路の壁面への反響音を利用して直線歩行をしている。(3)同じく全盲の者は、壁面の消失を、壁の向こう側からの音の登場、空気流の変化(顔面皮膚での知覚)、音場全体の変化などを利用して知覚している。(4)全盲の者は、壁との「距離(手や杖で届く距離)」を反響音と包囲音との関係の変化に聴く。(5)新宿で地上をナヴィゲーションした全盲の者は、近在する情報と、持続してある電車の通過音(JRの)情報の両者の関係を定位のために利用していた。大きな領域についての情報も存在することがあきらかになった。 データは、歩きながら逐一知覚している情報について述べてもらった発話プロトコルと映像として保存された。歩行者の視点からの映像(小型CCDカメラ利用)と、歩行者の全身の映像を撮影した。
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