本研究は、平成9年度において、主として東京を拠点として対象とする劇場の写真、図面などとともに、資料収集(当時の演劇人など劇場に関係した人物の言説を中心)、劇場関係者へのヒアリング等も行い、今年度(平成10年度)も引き続き研究を行うものである。 明治44年の帝国劇場建設から、関東大震災を挟み東京宝塚劇場誕生の昭和9年に至る、我が国の演出空間と劇場空間において、特に前舞台領域に注目し、既存の歌舞伎劇場に見られた劇場構造の変形経路を軸に、近代化された劇場空間の姿を明らかにすることを目的として研究を進めている。検証する上で、歌舞伎と新しい演劇ジャンルの併存(歌舞伎劇場及び歌舞伎以外のジャンルを上演する劇場への変化)、西洋近代の演劇の演出手法の併存、照明を中心とするFOH(Front of house)の扱い(舞台照明の進展)に対する対応を項目として挙げ、前舞台領域からの重要な材料とした。 〈調査・論文〉 平成9年12月、翌10年1月に閉鎖した(新建設の為)東京宝塚劇場において実地調査を行った。 帝国劇場から東京宝塚劇場に至る劇場空間の近代化について、「明治末期より昭和期に至る劇場空間の近代化に関する研究-前舞台領域の空間的変遷-」と題した論文を、日本建築学会計画系論文集に投稿中である。
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