雇用促進法に規定される「地域障害者職業センター」〈52ヶ所〉、1994年制度化された「障害者雇用支援センター」〈6ヶ所〉、「職能開発法」に基づく「障害者職業能力開発校」〈19校〉と「精神薄弱者能力開発センター」〈8カ所〉に郵送調査票調査を実施した。(施設名は略称記述)これらの就労援助施設適正化のため、次の3段階の観点で捉えた。 1)各施設における利用者特性 2)就労支援施設機能相互の連関性 3)社会参加環境支援体系の適正化の考察 本年度は下記の分析・考察を行った。まず、1)については、利用対象の障害種別を問わない「職業センター」「雇用支援センター」における「知的障害者」の依存度に着目しながら、利用者の属性・来所経路・退所状況などの基本的事項について、各施設の特徴を捉えた。2)の項目においては、各施設の利用者の特徴に基づく施設機能特性の連関性を明らかにした。3)からは、知的障害者に対する既存の福祉施設(更生・授産施設)と就労支援施設整備状況との関係性に着目して分析を行った。地域的偏在と設立経緯の特殊な「能開センター」を省略し、本年度の成果を列記する。 ・施設配置および利用圏は、「雇用支援センター」・「地域職業センター」・「能力開発校」の順に広域化しているが、利用者の障害の軽度化傾向・退所後の就労比率もこれに対応して高い。 ・平均年齢と来所経路から「地域職業センター」・「能力開発校」は、就労後の進路傾向が強く、「雇用支援センター」ではそれ以外の利用者比率の高さ・障害程度の重度化が指摘できる。この傾向は、今後増加が見込まれる地域施設に求められる利用者ニーズを示唆するものとして着目される。 ・「職業センター」も知的障害者の依存度の高さが認められるが、所在地間格差が大きい。この要因に福祉施設の整備状況の違いが挙げられ、福祉施設整備の進んだ自治体ほど、知的障害者割合が低下している。この理由として、 1)福祉施設ニーズの代替的利用:福祉施設整備の遅延が、「職業センター」利用を促す 2)就労支援ニーズの優位性:「職業センター」利用による就労支援の充実が、福祉施設需要を抑制する の対極的事項が考えられる。仮説的には、1)に依拠すると推察され、就労支援を含めた福祉施設の個別性・総合性・措置型施設への依存傾向の強さの反映と考えられるが、詳細調査による実証と、これを考慮した適正化が図られる必要性が指摘でき、次年度における継続的課題でもある。
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