「物」の構成として建築の構成を見たとき、子どもの教育的環境において「物」に関する構成行為が教育的に意味あるものとして機能している状況を捉えることができれば、そこから教育的な環境にふさわしい建築的な構成に関する多くの示唆を得ることができるはずである。フレーベルが考案した教育遊具としての「Gabe」を用いた遊びが、まさにこの「物」の構成行為と教育的意味をひとつに捉えようとしたものと考えられる。この「Gabe」遊びは、フレーベル独自の包括的な世界観に発したものであり、その世界観の理解がまず前提になる。本年度は、フレーベルの世界観の理解を深めるために、フレーベル関係の資料の収集と同時に、フレーベルが影響を受けたドイツ観念論やドイツ神秘主義の資料を収集し、フレーベルの教育思想の包括的な理解とともに、「Gabe」そのものの購入による実際の遊びの体験をも目指した。フレーベルにとっての教育行為の要点は、根源的な神のはたらきの場に、いかにして生き生きと人間の生を参与させるかという点にある。その際、はじめから神のはたらきの場を意図せずに生きている自然が手本になり、教師になることは当然のことであるが、自覚的な「物」の構成が神のはたらきの場に参与することは、ある意味では物の人工的抽象的な構成によって自然の構成を行うことでもあり、根本的な困難を含んでいるように見える。しかし、目に見えてくる姿は対局にあっても、生き生きしたはたらきへの参与として、つまり動的なはたらきのあり方やかかわり方に重点をおいてみれば、神のはたらきの場への参与として、ひとつの自覚的な参与の仕方が見えてくる。「Gabe」遊びを実際に行う場こそが、この生き生きしたはたらきを実感できるはたらきの場であり、フレーベルの包括的な世界観から「Gabe」遊びを理解する方向であることを確認した。この方向についての概要を発表した。なおこれらの詳細についてはさらに検討を重ねなければならない。
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