研究概要 |
高集積化電子磁気デバイスを開発するには,制御性の良い微細磁気構造の形成技術を確立すると共に,次元性の異なる構造体の基本物性を解明する必要がある.本研究では,走査型プローブ顕微鏡(SPM)による磁性微細構造体の創製を試み,その形成機構,結晶成長過程を明らかにし,微小領域における磁性体の物性を解明することを目的とする. 先ず,微細構造体形成に対し市販のSPMの適用性が著しく制限されていることを考慮し,新たに専用の原子間力顕微鏡(AFM)を自作した.システムの総合評価の結果,分解能は1nm以下であり,AFMとしての充分な性能が確保されていることを確認した.次いで,これまでに微小ドット形成の報告例があるAuを用いて,ドット形成機構の解明を試みた.ドット形成の際に印加するパルス電圧に対する詳細な電圧,電流特性の解析の結果,ドットは基板表面を覆う薄い酸化層が絶縁破壊する際の高密度放電電流による局所ジュール加熱に因るものであることがわかった.これら一連の結果より,再現性良く微小ドットを形成するには,絶縁層厚及び印加電圧,電流の精密制御が極めて重要であることが明らかになった.更に,これらのドット形成技術を用いて,強磁性材料であるCo微小ドットの形成を試みた.この場合もAuと同様に,条件に依存したサイズのドット(直径:50〜200nm)を作製できることが確認された.但し,全体の磁性部が占める体積が小さいために,通常の磁性及び結晶構造評価は困難である.今後,磁気力顕微鏡(MFM)及び透過電子顕微鏡等を用い,磁気特性の評価,構造解析を進める予定である.
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