本研究ではグラファイトやSe-S系試料を不活性ガス中そして活性ガス中でメカニカルアロイング(MA)を行い、あるサイズに粉砕した後、形成されたダングリングボンドに気体と反応させ、巨大分子を創製することを目的とする。 グラファイトをアルゴンガス中、水素ガス中、そしてSe-S系をアルゴンガス中でミリングを行い、その構造変化をパルス中性子回析を用いて観察し、ミリング後の分子サイズを計算によって求めた。 グラファイトのミリングでは動径分布関数RDF(r)の第1ピークの位置は全く変化せず、その配置数に大きな変化が見られた。この配置数の変化はあるサイズのグラファイトの粒子の表面に位置する炭素原子にダングリングボンドが形成され、通常の3配位から2配位に減少することに起因するものと考えられる。この考え方を用いれば、第1隣接の配位数からグラファイトのサイズを計算することができる。ただし、この時グラファイトはほぼ円状にになっているものと考える。この考え方でミリング時間30時間のグラファイトのサイズは直系を計算すると約30Aであることが明らかとなった。さらに、水素雰囲気中のグラファイトのミリングでは、水素原子がダングリングボンドと架橋していくことが明らかとなり、巨大分子の創製が明らかとなった。 さらにSe-S系のメカニカルアロイングは鎖状分子で構成されているSe結晶と環状分子で構成されているS結晶の混合を行うものである。分子レベルの混合と原子レベルの混合を検討した結果、MA120時間のミリングにおいても原子レベルの混合は生じておらず、分子レベルの混合のみとなっていることが明らかになった。その時、環状分子はS原子で構成され、鎖状分子はSe原子のみで構成されており、その鎖状分子は配位数の計算から約11個の原子で構成される分子であることが明らかとなった。
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