金属材料中の格子欠陥や粒界における局所構造・特性に関する研究は金属学の最も基本的で重要な問題であり、かつ未解決の部分の多い分野である。またこの問題は次世代の文明を支える新機能材料や特殊合金の開発のためにも、避けて通れないものとして関心が高まっている。現在まで金属中の局所構造に関しては、実験的にはX線、電子線回析やポジトロン消滅測定などによる構造解析、およびESCA、オージェ、EELSなどの分光法による状態分析、そして理論的にはクラスターモデルの電子状態計算や、分子動力学法などによる特性・構造予測などが行われている。しかし従来は、実験的研究と理論的研究とが互いに独立して行われ、あるいは独立に行われた実験を説明するための理論計算という形で行われているため、それらの有効性が十分発揮されていない。本研究課題においては理論と実験の両面から研究を進め、特にそれらを有機的に結合した。特に実験的研究においては、理論計算に耐えられるような、よく局所制御された試料について精度の高い測定を行った。理論面からはDV-Xαのクラスター法を用いて実験データを徹底的に解析し、問題的を指摘してそれを実験研究にフィードバックさせた.
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