研究概要 |
チタンの水和ゲルは,調製の仕方によっては,その表面に擬似体液中でアパタイトを自発的に析出させ,生体活性となりうる。しかし,その構造や化学的状態はよくわかっていない。したがって,電気化学的にチタンへの負荷電位とpHとを調整して,生体活性なチタニア水和ゲルの化学的状態とは電位-pH図(Pourbaix図)ではどの位置に相当するか,を知ることは,新規組織結合性金属材料を設計する上で重要である。 そこで,チタンを各種のpHに調整した0.1M KCl水溶液中に浸漬し,白金電極を対極とし,銀塩化銀電極を基準電極として,0-3V付近まで1〜20V/sで電位走査し,電流-電位走査曲線を描かせた。この曲線のアノード分極側に現われるピークは,金属の酸化被膜の生成に対応する。各条件でアノード分極させた試料について,擬似体液(小久保溶液)に種々の期間浸漬し,FT-IRや薄膜X-線回折法等で,表面構造の変化を検討する。当初は,ポテンシォスタットからの信号にノイズが重畳し,電流-電位走査曲線が得られなかったが,電極位置やシールドの工夫により,ノイズレスの曲線が得られた。ピークより手前で走査を中止した金属表面には,生体活性を与えるに有効な被膜が析出しなかった。この成果に留意して,現在アノードピーク後の電位まで走査したとき,またはその電位で3分〜1時間までの所定時間保持した材料の生体活性を詳細に調べている。また,電解質をNaClまたはNaNO_3等に変化させたときの効果についても検討中である。
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