超高加速度場(超重力場)は原子の拡散(沈降)を誘起するので、熱力学的パラメータである温度、圧力に加えての組成を制御する可能性を持っている。筆者らは最大100万gを超える超重力場を高温下で発生できる高温・超遠心機を開発し、合金系で最大2桁以上にわたる原子の傾斜分布を初めて実現した。しかしながら、固体中で原子の沈降を起こすためには熱エネルギーに匹敵する重力場が必要であるが、ゾル・ゲルでは見かけの化学ポテンシャルが小さく、比較的小さな重力場で沈降がおこりやすいので、ゲル段階での微細構造の制御と低温焼成により、原子、ナノレベル傾斜セラミックスガラスの作製が可能になる。 本研究は、ゾル・ゲルを出発原料として超遠心処理によって原子、ナノレベルの傾斜材料を作製することを目的している。本年度は温潤ゲルの超遠心処理を行うための60-100℃、最大加速度3.5万gの大容量で温度制御できる超遠心機を製作した。温潤ゲルの乾燥、焼結処理はデリケ-トな条件が要求されるので、マイコン制御の電気炉を用いて行い、ゲルの超遠心処理、その乾燥、焼結の一貫したプロセス法の確立をめざした。対象とするゲルは先ずSiO_2-TiO_2系などの主に二酸化物系の組み合わせを試みた。その結果、ゲルを出発原料にSiO_2-TiO_2系ガラスを作製できるところまで研究を進めることができた。現在、得られた試料について組成分析や構造解析などの観察を行っている。本年度は2年計画の初年度であり、装置の開発、ゾル・ゲルの超遠心処理、低温焼成によるガラスの作製の条件を探るところまで行った。来年度は、原子、ナノレベルで濃度匂配を持たせたガラスの作製実験や様々な観察・物性測定実験を本格的に行う予定である。
|