研究概要 |
本研究は、ゾルの構成粒子の原子量が大きいことから比較的弱い重力場fでも沈降が起こることと粒子間の沈降速度の違いを利用して、金属アルコキシドから原子・ナノスケールの傾斜構造を持つセラミックス、ガラスを作製しようとするものである。平成9年度にゾルの超遠心処理を行うための60-100℃、最大加速度35万gの温度制御できる超遠心機を製作し、SiO_2-TiO_2系でゾルの作製、乾燥、燒結の予備実験を行った。今年度は、実際にゾルの超遠心力処理により傾斜ゲルの作製、その乾燥、燒結の一貫した傾斜構造ガラス製造プロセス法の確立をめざした。 実験では、加水分解重合反応の触媒の量、攪拌時間、SiO_2ゾル、TiO_2ゾルの混合時間、超遠心処理の時刻、時間、温度などを変化させ、また、乾燥処理、焼成処理の温度、昇温、時間などを変化させて試行錯誤を繰り返し、クラックのない傾斜構造を有する複合ガラスの作製条件を探った。その結果、超遠心力処理を加えることによりSiO_2-TiO_2系ゲルから傾斜構造を有するSiO_2-TiO_2系複合ガラスを作製できることが明らかとなった。ガラスの組成分析の結果、重力方向にTiの傾斜濃度が観察され、X線回折ではガラス構造であることと合わせて、分子スケールの傾斜構造が形成されていることが確認された。また、ゾルのコロイド粒子の大きさが比較的大きな段階で遠心処理すれば、良好な傾斜ガラスが得られ、傾斜構造の形成は各コロイド粒子の生成速度、時間、大きさなどから決まる総合的な沈降速度の違いによって生じることがわかった。今後、VO_2,ZrO_2,SnO_2MgO,Na_2Oなど他の系のゾルとも組み合わせた系の傾斜ガラスの作製とその物性測定を行っていく計画である。
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