平成11年度の研究では、質量変動をナノグラムオーダーでその場測定できるQCM法を用いてNi新生面の初期酸化挙動の解明を試みた。すなわち、水晶振動子上にAuあるいはNi新生面を生成させ、N_2および人工空気の導入・排出に伴う質量変動をその場測定した。また、Ni新生面の初期酸化に及ぼす水分および微量汚染ガスの影響を調査するため、試験ガスにH_2OあるいはおよびSO_2を混入した実験を行うとともに、X線光電子分光により試験後の金属新生面の化学結合状態を調査した。得られた結果は、以下のように要約できる。 (1)AuあるいはNi新生面上へのNの吸着において、Au新生面ではN_2導入により単層を形成するが、吸着層はその後のガス排出により完全に消失する。一方、Ni新生面では、N_2導入の極初期に、真空排気などによっても引き離すことができない強い結合力の単層吸着が生起する。XPS分析では、物理吸着したN_2の結合エネルギー399eVより1eV程度低い結合エネルギーを有する、吸着原子Nの存在を確認できる。また、その単層上部にはvan der Waals力のような弱いカで結合した付加的単一吸着層が形成される。(2)人工空気導入・排出試験では、Ni新生面においてN_2導入時より大きい極初期の質量変動を観測できる。また、その後の質量増加も著しく、吸着層数はN_2導入時の約1.5倍に達する。さらに、XPSスペクトルからは、Ni新生面上に化学物層NiOを確認できる。(3)Ni新生面の初期酸化過程において、混在するH_2Oはガス導入極初期に生成する吸着層の質量を増大させる。一方、SO_2はガス導入の極初期よりも、その後に生成する付加的吸着層に濃縮し、質量増加速度の増大に寄与する。
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