粒子表面の化学修飾と高エネルギー粉砕プロセスを組み合わせてナノ粒子の作製することを目的として、まず、粉末の表面酸点を利用した修飾基の導入を試みた。利用価値の高いアルミナとチタニアに加えて、固体酸性度の異なるシリカと酸化イットリウムを用い、それぞれ結晶構造あるいは結晶性の異なる二種ずつ合計八種類の酸化物粉末を5vol%の蒸留水を加えたアセトンに分散した後、4Hzで3時間の遊星ボールミル処理を行った。その結果、粒子表面には、シリカで4.1〜6.1μmol・m^<-2>、チタニアで6.5〜8.5μmol・m^<-2>、アルミナで2.7〜5.9μmol・m^<-2>のブレンステッド酸点が形成された。固体酸性度の低い酸化イットリウムは水和量は著しく高い1.4×10^3μmol・m^<-2>になったが、表面酸点は低濃度であった。酸点の形成は固体酸性度と結晶性に依存して変化した。これに伴って、得られた粒子の結晶子径は約14〜18nmとなり、目的値に近い粒子径が得られたが、比表面積換算径は30〜76nmとなった。SEM観察と沈降挙動の測定から、この違いは得られた粒子が0.3〜3μmの凝集構造を有しているためであると考えられた。種々の有機分散媒と水およびいくつかの有機酸を修飾剤とした組み合わせにより粉末を処理した結果から、効果的な微粒子化のためには、4〜20程度の比誘電率を持ち修飾物質を溶解できる分散媒に、誘電率が高く酸性度があまり高くない有機酸や水を数vol%添加することによって、粒子表面を修飾して凝集粒子を形成させ、これを塑性変形させながら粉砕することが必要であると考えられた。 また、試作した表面修飾制御装置を用いることにより、処理をこれまでの回転数制御から遠心加速度の直接制御とすることが可能になり、被粉砕物の固体酸性度および分散媒特性と遠心加速度の関係を最適化して、上記の水/アセトン系において粉末の修飾量を増やしつつ汚染量を低減することができた。
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