数千気圧までの圧力領域での有機化合物の分子結晶の成長過程を観測可能な高圧装置により、分子結晶の成長速度の測定を行った。測定にはベンゼン、ラウリン酸、トリカプリンの3種の物質を用いた。また結晶成長速度データの解析を行うために融液の密度、粘性率、融解温度の測定も同時に行った。3種の物質に於いて、成長速度の圧力依存性は異なった。ベンゼンでは加圧により100MPaまでの領域では成長速度は減少し、極小値を取った後は、逆に圧力増加にともなって成長速度が増加することが分かった。100MPa以上での成長速度の増加減少はこれまで報告されていない。ラウリン酸では成長速度は圧力にほとんど依存しなかった。一方、トリラウリンでは圧力増加にともない成長速度は単調に減少した。この場合には物質移動過程が成長の律速段階になっていることが予想される。また、結晶成長におよぼす重力の影響を調べるため、成長方向を変えた実験を行った。その結果、ベンゼンとラウリン酸では成長方向に係わらず一定の成長速度を示したが、トリカプリンでは成長方向によって速度が異なった。すなわち、垂直下向きが最も成長速度が早く、次が水平方向であり、垂直上向き方向は最も成長速度が遅かった。このことは、トリ力プリンのような成長速度が極めて遅い物質の場合には、融液内での対流現象などが成長速度に大きく影響を与えていることを示すことを表している。
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