研究概要 |
β-1,4-キシランは陸上植物細胞壁中に多く含まれる多糖であり,単糖であるD-キシロースがβ-1,4-結合を介して鎖状に連なった構造をとる.キシランのβ-1,4-結合を水分分解する酵素がキシラナーゼである.平成9年度は,枯草菌に由来する中性キシラナーゼの分子進化工学による耐アルカリ性化を目的として,枯草菌キシラナーゼ遺伝子のクローニングを試みた.既に報告されている枯草菌キシラナーゼ遺伝子の塩基配列に基づいてPCR用プライマーを設計・化学合成し,枯草菌DB104株染色体DNAを鋳型とするPCRを行った.PCR産物をプラスミドベクターにクローニングして,枯草菌キシラナーゼ遺伝子を得た.塩基配列決定の結果,構造遺伝子領域の配列は既報の配列と完全に一致した.枯草菌キシラナーゼ遺伝子を導入した大腸菌をキシラン含有プレート上で生育させた場合,コロニーの周囲にハロ-が観察された.これより,枯草菌キシラナーゼ遺伝子がは大腸菌において発現したものと考えられた.大腸菌のペリプラズムに生産された枯草菌キシラナーゼの反応の至適はpH6.0であり,元株の枯草菌が生産した酵素と同じ性質を示すことがわかった.次に,バシラス属細菌用プラスミドpHW1を出発材料として,大腸菌-バシラス属細菌シャトルベクターを構築した.このシャトルベクターを用い,上で得られた枯草菌キシラナーゼ遺伝子を好アルカリ性バシラス属細菌C125株に導入した.枯草菌キシラナーゼ遺伝子のC125株における発現が,プレート上でのハロ-の形成・活性測定によって確認されたものの,その発現レベルはあまり高くないことが明らかとなった.
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