研究概要 |
フラーレンは,夢の新素材として、注目を集めており、生命科学の分野でも、大きな可能性が期待されている。そこで、本研究では、フラーレンの生命科学への導入を、さらに押し進めるために、まずは、これまでに報告例のないフラーレンおよびその誘導体の生体触媒を用いた変換を試みた。変換を試みるにあたり、フラーレンの分析方法の検討を行ったところ、ODSカラムを用いた逆相HPLC(移動相:トルエン/メタノール 50/50、内部標準:コロネン)により、フラーレンの定量が可能なことがわかった。そこで、有機溶媒中において、生体触媒として、種々の有用な反応を行う可能性を持つパン酵母とシュードモナスの属する菌体33株を凍結乾燥したもの用いて、フラーレンの変換を試み、フラーレンの変化の有無をHPLCを用いて判定したところ、今回使用した条件では、用いた全ての菌体において、フラーレンを変換したという形跡を見いだすことはできず、他の生体触媒の検索や反応条件の検討など、更なる検討が必要だとわかった。また、フラーレン誘導体の生体触媒による変換を検討するにあたり、C_<60>誘導体である{6}-1-(3(Methoxycarbonyl)propyl)-{5}-1-phenyl[5.6]-C_<61>(エステル1)と、同じ側鎖をC_<70>に導入したエステル2の加水分解酵素による加水分解反応をモデルに選び、これらのフラーレン誘導体における酵素変換の可能性およびフラーレン骨格が酵素反応に与える影響を検討することにし、今回、まず、エステル1の合成を行った。今後、エステル2の合成も行い、上記の検討を行う予定である。
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