研究概要 |
本研究ではデジタル光情報を化学センシングに利用する目的で、デジタルカラーアナライザーで測定する新しい分析方法を提案した。 デジタルカラーアナライザーは簡便、安易に色測定を行える分析ツールであり、測定されたスペクトルデータから三刺激値(X,Y,Z)を算出し、これをもとに数種の方法で色を数値化するあるいはデジタルカラーライブラリー化することができる。 本年度は、デジタル色情報を利用して人間の目に鮮やかな色変化を作り出し、より正確な目視定量が可能となるNa+定量用のイオンセンシングプレートを作製した。このフィルムの色変化をデジタルカラーアナライザーで測定し、有効性を評価した。 用いた化合物は、Na+選択性イオノフォアDD16C5、脂溶性アニオン性色素KD-A4又はKD-A5、脂溶性遮蔽色素KD-S1であり、これらを包括した可塑化PVC膜をスピンキャスト法によって作製し、イオンセンシングプレートを作製した。 遮蔽色素を含まないセンシングプレートはNa+濃度が大きくなるに従ってyellow〜green〜blueと変色した。一方、遮蔽色素を含むセンシングプレートはorange〜gray〜purpleと変色の途中で色味のないgrayを呈し、コントラストの大きい鮮やかな色変化をした。これら2つのプレートをスペクトロフォトメトリーでの最大吸収波長の吸光度変化により得られた応答曲線で比較すると差はほとんどみられなかったが、デジタルカラーアナリシスでの色差DEでこれらの応答を比較すると遮蔽色素を含むセンシングプレートではDEを増大(感度を増大)することができる。このため、遮蔽色素を加えることで、より正確な目視定量が可能なセンシングプレートを作製できることがわかった。
|