従来の光分析においては、光スペクトルや吸光度などの光学的なシグナルを分光機器で測定し、精度の高い定量に用いるのが一般的である。本研究では、このようなスペクトロフォトメトリーではなく、色をデジタル情報として扱い、観測される色そのものをデジタルカラーアナライザーで測定する新たな分析法(Digital Color Analysis;DCA)を提案した。デジタルカラーアナライザーは簡便に色測定を行うことができる分析ツールであり、色を様々な方法で数値化したり、カラーライブラリー化したりすることができる。このため、スペクトロフォトメトリーよりも多くの情報を利用した多様な定量が可能となると同時に、色変化をシミュレートしてセンサー構築の最適化に用いることもできる。 本年度の研究では、昨年のDCAに基づくオプトードデバイスの開発を目的とし、DCAに関するさまざまな基礎研究の結果をふまえ、最終的にナトリウムイオンセンサーへの応用を行った。ナトリウムイオノフォア(DD16C6)、脂溶性カチオン性色素(KD-M11)、脂溶性アニオン(TFPB)、膜溶媒(NPOE)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させてコート紙上でスピンキャストし、試験紙状のオプトード(光化学センサー)を作製し、このセンシシグペーパーに10^<-5>M〜1MのNa^+溶液を滴下して一定時間後に水分を拭い、デジタルカラーアナライザーにより反射スペクトルを測定した。メロシアニン系の変色色素であるKD-M11のみを含む試験紙の反射スペクトルを測定した結果より、試験紙の色変化と、さらにKD-M11および赤色のアゾ系遮蔽色素KD-S1を含む試験紙の色変化の数値処理を種々検討した。その結果、色度座標のひとつであるQxQy色座標が最適であり、この場合10^<-5>〜10^<-1>MNa^+の範囲での直線的検量線が得られた。また、デジタルカラーアナライザーを用いれば、1mMの濃度差で判別できることが分かった。
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