1.水によるシリコン(111)面の原子レベルでの平坦化 完全に酸素を除いた純水によって、シリコン(111)面が原子レベルで平坦化されることは従来より知られていた。しかし、酸素の完全な除去は容易ではなく、この方法のデバイス作製への応用や、表面観察の研究に応用することに限界があった。我々は、水中の酸素を除くために、脱酸素剤として亜硫酸塩を用いることを検討した。その結果、亜硫酸塩の存在は表面平坦化に悪影響を与えずに、有効に溶存酸素を除去することができ、極めて簡便に表面平坦化が達成できることを見出した。 Si表面の原子レベルでの平坦化過程を直接観測するために、亜硫酸イオンを添加した溶液中での原子間力顕微鏡測定を試み、水中における原子レベルで平坦化されたSi(111)面およびステップの後退過程を初めて観測することに成功した。 2・シリコン(111)面の平坦化過程の電気化学的追跡 フッ化物イオン(一部はフッ化水素としてして存在)を含む水溶液中では、純水中と比べて極めて速い速度で、n型シリコン(111)面の平坦化が進行する。この過程をn型シリコン電極の電気化学特性から検討した。0.0V(Ag/AgCl)の電位より正の電位で定常的なアノード電流を生じるが、この電流はシリコンの溶解、および平坦化と密接に結びついていると考えられる。この電流値を種々の条件下で測定すると、溶液中に酸素が存在すると電流値が低下することが見出された。このことから、溶液中の酸素はシリコンを酸化することによって平坦化過程を阻害するのではなく、フッ化物(フッ酸)さらには水による平坦化そのものを阻害する作用を持っていることが示唆された。
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