マイクロポンプの原型として、18mm×18mmのガラス基板上に2本の銀微小電極(幅0.2mm、長さ3mm)を間隔0.2mmで平行に並べて作製し、その電極を厚さ0.1mmのイオン性高分子ゲル膜で被覆したものを作製した。電極間に0.1V〜0.5Vの周期的な電圧を加えると、ゲル表面が周期的に上下運動を繰り返す。微小な動きを検出するために、ゲル表面に反射板を置き、レーザー光線を当て、その反射光の動きを半導体位置検出素子を使って測定した。その結果、1V以下の低い電圧でゲル表面が動くことが明かとなった。水の電解の電圧1.2Vより低い電圧で作動することは重要である。電気分解による不純物生成を抑制するほかに、運動装置としてエネルギー変換効率が高くなるからである。レーザーフォーカス変位計を使い、表面の上下運動の幅はほぼ10μmであることが分かった。 続いて、マイクロポンプを作製するために、5本の微小銀電極をガラス基板上に作製した。この系では、5本の電極に順次電圧をかけていくことが必要である。そのための電気回路を作製し、パーソナル・コンピューターで制御するようにした。現在、測定中である。再現性などについて、まだ検討すべき点が多々あるが、ゲル表面の膨潤で生じた山が一方向に進行することを確認できた。現在、問題点となっているのは、微小電極の作製である。5本の微小電極を再現性よく作製するためには、2本のときと比べて、より注意深い作業が必要である。電極製造過程の検討が必要なことが明かとなった。その他、イオン濃度、pH変化、温度変化などでゲルの膨潤収縮は起こるので、イオン性高分子ゲルの選択を含めて、ゲルの動きを誘導する方法についても再検討している。
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