本研究は、高分子微粒子の合成法として広く用いられている乳化重合法において、その機構を解明し、重合の制御法を確立するための実験手法を検討することを目的とする。具体的には、(1)重合過程で採取した微粒子からその構成高分子が容易に得られる実験系の確立と、(2)粒子と構成高分子のキャラクタリゼーションを正確に行なうための測定手法を検討する。そのために平成9年度と10年度にわたり研究計画を行ったが、本年度はN-アルキルアクリルアミド(NAAA)の架橋高分子から、直径が約100nm程度のゲル微粒子を合成して、ドデシル硫酸ナトリウムやドデシルベンゼン硫酸ナトリウム等の界面活性剤との相互作用を調べるとともに、ポリビニルアルコールの希薄水溶液にγ線を照射して、ミクロゲル微粒子が生成する過程をレーザー光散乱法を用いて詳細に調べ、高分子微粒子(ミクロゲル)の生成機構を検討した。その結果、重合の過程で生成する分岐状高分子が互いに架橋して核となる超ミクロゲルが生成し、さらにその界面近傍で分岐状高分子鎖の架橋反応が続き、高分子微粒子に成長することが予想された。特に、動的光散乱法を用いた粒子径の変化と、静的光散乱法による分子量の変化を比較し、構造因子(慣性半径と流体力学半径の比)の変化を見ると、重合の過程で1.5から0.9に変化し、次第に球状高分子微粒子(ミクロゲル)に変化する様子がわかった。従って、上述した(1)と(2)の実験手法を確立するための手掛かりが得られたと判断されたので、来年度はNAAA系についてさらに詳細な検討を行う予定である。
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