研究概要 |
最近,歯周病に罹患し炎症を起こし傷んだ歯肉を手術で切除し,歯根膜や歯槽骨,セメント質といった歯組織の再生を目的とした組織誘導再生療法が試みられる様になったが,根面に近接する未分化間葉系細胞がセメント芽細胞に分化しないため,歯根膜,歯槽骨が完全に再生することができない。そこで本研究では,歯根表面プレセメント質から,ヒト歯肉線維芽細胞を走化させ,歯周組織再生を誘導する物質を精製し,諸性質を検討した。 歯科用キュレットでヒトおよびウシ歯のプレセメント質を掻爬し,PBS(-)にて抽出,HPLCゲル濾過にて分子量分画を行い,各分画のヒト歯肉線維芽細胞に対する走化活性,TGF-β,BSP活性を検討した。ヒト及びウシ歯に共通して認められた分画は27〜29万であった。ヒト及びウシ歯ともに,TGF-β活性は17万に,BSP活性は4.4〜16.5万に認められた。そこでヒト及びウシ歯ともに細胞走化活性の認められた27〜29万について,材料入手の容易なウシ歯を用いて,更にHPLC陰イオン交換,HPLハイドロキシアパタイト,SDS-PAGEにて精製し,66kDaを単一バンドとして得た。ウェスタンブロット法により,既知の骨再生誘導因子であるBMP2,BSPではないことを確認した。また分子量の近接しているBSAでないことも確認した。今後は,アミノ酸配列等を調べ,新規性を確認後,アミノ酸配列をもとにプローブを作成し,遺伝子をクローニングする予定である。
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