研究概要 |
本年度は,昨年度報告したヒト歯肉線維芽細胞を走化させるウシ歯根表面プレセメント質由来66KDaタンパクを,HPLCゲル濾過,HPLC陰イオン交換,HPLCハイドロキシアパタイト,HPLC-逆相,SDS-PAGE等にて多量に単離精製し,その走化活性及び増殖活性について既知物質との相違を検討した。歯周組織に存在する歯周靭帯細胞及び歯肉線維芽細胞に対し細胞走化活性がすでに報告されているPDGF-BB,AB,AA等に比べ,66kDaタンパクは約1/100の濃度で歯肉線維芽細胞に対し細胞走化活性を示したが,細胞増殖活性はPDGF-BB,AB,AA等の約10倍濃度を必要とした。すなわち66kDaタンパクは細胞走化活性に特異性がある物質と考えられた。またPDGF-BBとの併用では走化活性の相加効果が認められ,すでに前臨床での効果が報告されているPDGF-BBとIGF-Iの組み合わせより高い走化活性を示し,臨床応用が期待できる結果を得た。 γ線照射したウシ歯セメント質粒子をゼラチン多孔性膜に包埋し,歯肉剥離掻爬手術(in vivo:サル)に用いた場合,歯周靭帯形成がなされず歯槽骨再生のみが進行し,歯槽骨が歯根面に接着する,いわゆるアンキロージスが認められた。γ線照射したウシ歯セメント質粒子のPBS(-)抽出物のHPLCゲル濾過では,全体に抽出物の低分子化認められた。またSDS-PAGEでは,66kDaタンパクは認められなかったことから,66kDaタンパクは歯周靭帯形成(分化)にも関与している可能性が示唆された。
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