本年度に行った研究とその成果を以下にまとめた。 1) 温度敏感性ゲルの相転移を利用した、細胞への応力印加の実験。: これについては、ゼラチンを混入したNIPAゲルを用いて、試行実験を行った。結果は、膨潤相から収縮相への変化に関しては目立った効果は見られなかった。現在、細胞に有効に力を印可する方法を開発すると共に、収縮相から膨潤相への転移の効果も調べつつある。 2) 化学架橋ゼラチンゲル基盤の合成: 細胞接着性が良好で、しかも比較的自由に弾性的性質を調節出来る基盤として、ゼラチンとコハク化ゼラチンの混合物をカルボジイミドで架橋したゲルを開発した。ゼラチンとコハク化ゼラチンの混合比を変えることにより、弾性率が同じで、膨潤率が異なるゲルを得ることが出来た。 3) ゲルの弾性率測定: 電子天秤を利用してゲルに一定の加重を印可し、その変形から、ゲルの静的弾性率(ヤング率、合成率、および体積弾性率)を決定した。 4) ゲル基盤の弾性的性質と培養細胞の形状との関係 基盤(足場)と細胞との力学的相互作用が、細胞の機能、増殖能、形状などに与える影響を理解するためには、基盤の弾性的性質が細胞に与える効果を調べる必要がある。上記の方針で、弾性率を測定したゲルで、マウス3T3繊維芽細胞を培養してその形状を調べた結果、細胞形状は基盤の堅さに強く依存することが分かった。具体的には、基盤ゲルのヤング率が1x10^4[dyn/cm^2]以上の場合、7x10^3〜1x10^4[dyn/cm^2]、7x10^3[dyn/cm^2]以下の場合のそれぞれに応じて、細胞の外径および増殖のパターンに顕著な相違が見られた。より詳しい解析を実行中である。
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