液状ゴム高分子を溶液中で架橋し、生成したゲルから溶媒を完全除去して得られる脱膨潤ゲルの物性を力学物性、低温物性の観点から調べ、ゲルの構造との相関を明らかにした。一次高分子鎖として分子量分布の狭い分子量約10万のポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い、種々の濃度の溶液中でPDMSを末端架橋することにより、脱膨潤時の系の体積の変化の程度が異なる朕膨潤ゲルを作製した。約10%の低濃度で作製された脱膨潤ゲルは、破断歪みが3000%を超える高伸長性を示すことがわかった。低濃度での架橋により、破断の因子の一つである網目構造中の高分子鎖同士のからみあいの数が減少していること、および脱膨潤時の体積減少が大きいため未変形時の網目鎖の両末端間距離が減少していること、が高伸長性発現の原因と考えられる。この破断歪みの実験値は、現在報告されているエラストマーの破断歪みとしては最高値と考えられている。また、高伸長性を発現するゲルの応力の伸び依存性を高分子鎖の大変形に関するスケーリング理論を用いて解析し、脱膨潤ゲルの網目鎖のコンフォメーションのフラクタル次元を推定した。その結果、脱膨潤ゲルの網目鎖は、高分子鎖の通常の形態(ランダムコイル)と比べるとかなり密なコンフォメーションを有していることがわかった。脱膨潤ゲルのガラス転移および結晶化-融解挙動をゲル作製濃度を関数として、示差熱量測定により調べた。作製濃度が低くなるにつれ、網目鎖の運動性を拘束するからみあいの減少により一次PDMS鎖に見られる融解一再結晶化挙動を示すようになり結晶化度も増加したが、15%以下の低濃度では融解-再結晶化挙動は再び消失し結晶化度も低下した。15%以下の低濃度での特異な挙動は、脱膨潤時の大きな体積変化によって形成される網目鎖の密なコンフォメーションが結晶化および融解一再結晶化挙動を阻害するためと考えられる。
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